旅の途中にちょっと一息つける峠の茶屋のようなWEBマガジン

DRIVE & LOVE

 関西発の情報誌「Meets Regional」と「Hanako WEST」にて、ローカル誌を一躍全国レベルの知名度にし、一時代をリードしてきた元名物編集長2人による淡路島東西海岸うまいもん対決!
「淡路島で魚を食べるならここや」という意気込みたっぷりにいざ!

 鯛にしろハモにしろ、またタコやウニもとりわけ「淡路のがうまい」というのは、大阪や神戸にいるグルメならよく知っていることだ。また淡路で揚がる魚は、アジやイワシといった青背のものをはじめ、カレイやヒラメ、ガシラやメバルやオコゼ…といった白身の魚を含め、魚種が実に多いのも特徴だ。

 淡路島の北端の明石海峡と南端の鳴門海峡は潮の流れが早くて、そこで捕れた魚はことさら身が締まっていてうまい。たとえば鯛にしても「明石鯛」「鳴門鯛」といったブランド名で呼ばれている(けれどもどちらも「淡路」という名前が冠せられていない)。

 わたしは岸和田で生まれ育ち、大阪で仕事をし、神戸に住んでいるから、ほとんど対岸にあって新鮮な魚介の供給源である淡路の魚にはとりわけ親しんできた。「ハモはやっぱり沼島」「由良のウニも日本一」というふうに身近に感じられる幸運に恵まれてきた。

 そのことが一番感じられたのが、神戸の三宮にある鮨屋の名店[源平]だった。その[源平]には、神戸に住みだして三十数年、毎週1〜2回のペースで通っていた。この淡路島の特集でご紹介する[海山]は、[源平]に約十年板前として目利きと腕を振るってきた山家孝介(やまがこうすけ)さんが、郷里の淡路島洲本市に帰ってオープンした店である。開店してちょうど1年。京阪神のグルメにとっては「淡路でこの店知らなかったらモグリ」という存在になっている。

 山家さんは毎朝、その日店で料理として客に出す魚介を、クルマで15分の由良漁港へ仕入れに行く。仕入れ先は「うちのメンバー」。つまり由良漁港の漁師や水産物を扱う業者が山家さんの「メンバー」であり、彼らは毎朝未明3時くらいから10時過ぎまでのその日の漁を終えて由良漁港に帰り、直接水揚げする漁師たちだ。彼らは子どもの頃からの先輩後輩や同級生あるいは肉親であり、凍える朝も雨の日も漁港で顔を合わせている。そういった由良漁港の地元コミュニティが、[海山]の料理を支えている。

 「料理人の教科書にある通り一遍ではない、細かい旬や食べ方まで、一番知ってる漁師から、毎日教わっているんですわ」と語る。そこには地元由良の水産物を扱う一人としての誇りすら感じられる。

 築地や大阪、京都などに運ばれる淡路由良産で、ひときわブランド物となっているのは夏のハモ、赤ウニ、冬のトラフグ、ナマコ…と枚挙にいとまがないが、前述の多種多様な魚が毎日、活きたままピチピチと揚がってくる。山家さんはその魚介を毎朝10時くらいから待ち構えている。漁師同様の防寒着に長靴姿で、出刃包丁とまな板が入ったトロ箱を持参し、漁船が接岸するや船に飛び移って、いの一番にその日の収獲を見、触り、話を聞き、そして店で使う魚介を買って帰る。

 船着き場で魚種ごとに選別され、奥の市場に運ばれセリにかけられる前に、「ハネる」から、一番良好で新鮮な魚を入手していることになる。魚種によっては船の上で鱗やはらわたを取り、海水で水洗いしながら捌く。「海水で締めると活きたままの塩水分を保てるんです」なるほど。

 魚介の仕入れ方は、たとえばハモなら小中高と同級生の「住吉丸」、アオリイカなら先輩の「蛭子丸」、アワビやサザエ、ウニは潜り漁師の山家正明さん(お父さんである)から…といったように、魚種によってその日の仕入れ先を選んでいることだ。一見同じ形、同じ大きさの船(すべて4.9トン)でも、漁法、得手不得手、その日の狙い目によって魚種が違うのだ。

 店に帰るのは、遅めに帰港する船が昼過ぎに水揚げしてから。だから「昼の営業は出来ないんですわ」。ちなみに夜も3時間しか料理のオーダーを受け付けない。

 徹底的に地元にこだわっているのは魚介類だけではない。店の設計施工は地元大工と「あれこれ話をしながらつくった」。ヒマワリ油で丁寧に磨き上げられた檜のカウンターは岡山県で見つけてきた。まな板には6尺(180センチ)×2尺(60センチ)幅5寸(15センチ)のイチョウの一枚板を使用。皿やコースター(酒器受け)、箸置き…は特別に焼いた淡路瓦のものだ。。

 メニューは「大将おまかせコース」のみで、5300円、6000円、7000円の3つ。5300円のコースで、前菜、造り、タタキ、煮魚、天ぷら、鮨4貫に赤だしがつく。もちろん予約時に「ハモとアワビが食べたい」とか「てっちりを」といった相談も可能だ。

海山(かいざん)
0799-26-1212
兵庫県洲本市本町4ー2ー35
17:30〜20:30頃(ネタがなくなり次第閉店)
火曜休【漁が休みの為、年末年始休(応相談)】
洲本港から車で5分
駐車場:なし(近隣に駐車場あり)

江 弘毅
1958年岸和田市生まれ。『ミーツ・リージョナル』編集長として同誌を全国区人気の雑誌に。2006年に独立し、編集集団140B編集責任者として執筆や編集に携わる。著書に『街場の大阪論』(新潮文庫)、『「うまいもん屋」からの大阪論』(NHK出版新書)、本年12月には『飲み食い世界一の大阪』(ミシマ社)を上梓。

BackNumber

ドラブっくchaya

2012年 第7号
冬こそホットな淡路島!

pagetop