旅の途中にちょっと一息つける峠の茶屋のようなWEBマガジン

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ドラブっくchaya

第11号 運転上手と言わせたい

  • 第11号(2013年8月発行)
  • 運転上手と言わせたい
  • 運転「上手い人」と「そうでない人」の分かれ道チェック!
  • 運転が上手いということ
  • ペーパードライバーからの<br />脱出、なるか?
  • いろんな乗り物の「運転」を取材して
  • 女子会大放談「しょっぱいドライバー撲滅宣言」
  • 潜入!高速道路のヒミツ
  • 遊牧運転もラクじゃない
  • プロジェクトメンバーレポート
  • Chayaだより
  • Chaya川柳 Chaya川柳募集中!今回のお題は「夏バテ」
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  • 次回は9月20日更新 Chaya川柳優秀作品を発表お楽しみに!
  • 編集趣意

運転が上手いということ

車好き編集者、『Meets Regional』元編集長・江 弘毅と『ぴあ』元副編集長・石原 卓が、免許取り立てで運転がしたくてしょうがなかった学生時代を懐かしんで、「運転が上手いということ」を語りました。

駐車場バイトで学んだ数センチの美学

サーフィン・ドライブで知った「快適な運転」

サーフィン・ドライブで知った「快適な運転」 文/江 弘毅(編集者)

波をもとめてロング・ドライブ

 もうずいぶん前、30年も前のことだが、週に2回ペースで(波があればそれこそ毎日)サーフィンに行っていたことがある。
 わたしはその頃(大学生だったが)大阪府南部の岸和田市に住んでいて、サーフ・ポイントは一番近いところでクルマで約1時間と少しの和歌山市の磯ノ浦海岸だったが、そこは低気圧がやってきて通過する2?3日間と、台風が天気図に記される8月後半から9月までの期間しか大きな波が立たなかった。
 だから、四国の徳島や高知、南紀、伊勢志摩、冬なら丹後半島や鳥取まで足を伸ばした。
 クルマは自分ではコロナのバンを持っていて、友人たちもワンボックスのワゴンとかシビックとかのルーフにキャリアを積んだ「サーフィン用」のクルマばかりだった。
 とりわけ四国はコンスタントに波があったのと、大阪府最南端の深日港あるいは和歌山港から夜行のフェリーに乗って、明け方に徳島から南へ東海岸沿いをひたすら南へ走る国道55号線のドライブがとても「波乗り」な気分がして楽しかったから、毎週のように3?4人の仲間たちとクルマに乗り込んで、フェリー代ガソリン代、そして運転をシェアしてロング・ドライブした。

岸和田~室戸岬、国道55号線はイーグルスを聞きながら

 四国への行程は岸和田から深日港まで約30キロ、四国に渡って徳島港から高知県の東の突端・室戸までだいたい140キロ。それまでに内妻海岸、海部川河口、宍喰海岸、高知県に入って生見海岸、尾崎というポイントがあった。
 季節風、潮の干満、その日の低気圧の方向や風向きでコンディションが変わるから、ポイントからポイントへちょこまかちょこまか走っていた。
 場合によっては、室戸岬を西へ回り込み奈半利川(なはりがわ)の河口、高知空港の近くの物部川(ものべがわ)河口まで足を伸ばした。どこも波がよくなくて結局、運転に10時間、海に入ったのが30分ということもたまにあった。そういうドライブを日帰り(正確には船中で日付が変わる)でやっていたのだ。
 国道55号線を南へ、左に海を見ながら、時には海から上ってくる朝の太陽を見ながら、ずーっと走るドライブは美しい。カーステレオは小さい音でもしっかり良い音で聞こえるように、高価なスピーカーを張り込んでバンの後部左右に埋め込んでいた。パイオニアの「ロンサムカウボーイ」が流行った西海岸の時代だ。カセットにはイーグルスとかフリートウッドマックとかパブロクルーズとか、おのおのがコンピレーション編集して毎回45分テープ×10本ぐらい、その時間や気分に合わせてかけていた。マイケル・フランクスやキャロル・キングはよくかかっていたが、ユーミンやサザンオールスターズをかけようというヤツはいなかった。
 サーフィン・ツアーの快適な運転とは、ドライブには違いないのだが、運転そのものを楽しむのではなく、時間や天候で変わる雄大な海の自然、流れる山や森、漁港や集落などの景色、過ぎゆく時間とともに走ることだ。本来、波の立つポイントへの移動に違いないのだが、そのドライブの楽しさは、急発進、急加速、急停車、急転回をせずに、速く快適に波の立つポイントまでずっと走り続けることで倍増される。赤信号に引っ掛かって止まったり、そこから走り出したりでギアチェンジを頻繁に…などなどは少ない方がいい。急ブレーキはもってのほかだ。クルマを右へ左へとローリングさせ、疲れて後座席で寝ている仲間を起こすような運転をすると、交替要員が減るということもある。

仲間と“走る時間”を共有する

 社会人になり雑誌編集が仕事となり、ドライブの特集やクルマのページをつくったこともある。ポルシェ911やアルファロメオGTVの新型も4WDのパジェロにも試乗した。ポルシェは逆に発進に加速、ブレーキがすごく良くて急制動がことのほか優れているが、それは自分で運転する場合の楽しみ方だ。
 波乗りの70年代後半を思い出すと、その時に誰かを乗せて、あるいは自分が助手席に後部座席に乗って、仲間とぺちゃくちゃ喋りながら、日の出や夕焼けにうっとりしながら、時には先に寝るからと自分だけビールを飲んだり、そういうこと込みで仲間とロング・ドライブすることの楽しさは、それ以上だと思っている。
 わたしがその時代に仲間からよく言われたことは「脇見をしたり話に熱中して危ない」とか「駐車の仕方ががさつだ」とかでさんざんだったが、本当に運転のうまいドライバーというのは、自分以外のだれかを乗せてドライブして喜ばれることを楽しみの一つとしている人なのかも知れない。

プロフィール 文 江 弘毅(こう・ひろき) 1958年岸和田市生まれ。関西の人気雑誌『Meets Regional』元編集長。2006年に編集集団140Bを設立。著書に『飲み食い世界一の大阪』(ミシマ社)など多数。現在、新潮社『波』にて「有次と庖丁」、毎日新聞夕刊「濃い味、うす味、街のあじ。」を連載中。車好きだが最近は、「酒が飲みたいから」とペーパードライバー歴が長くなっている。

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